NPO WBN技術講座

第4章:ヘルスケア・システム構築のための基本技術 - ワイヤレス技術篇 IV -

第一回講座を開設(March/2019)してからからもう1年半以上が経過してしまいました。その間,第二回(May/2019),第三回(Dec./2019)とデータ伝送技術の基本的知識や近年のIP環境での利便性を改善するためのQoSクラスの導入などに関する知見を取得する講座が続きましたが前回までの講座で漸くBANネットワークアクセスについての基本的な知見を得られるところまで到達出来たと感じています。ただ,今回の講座の後半部をよりよく理解するためには物理層の基本技術(具体的にはワイヤレスディジタル変復調技術)やnetwork securityの基本である暗号化に関する知見が必要となりますので読んでくださる方々全員に分かり易い記述とは云えない箇所もあることを了解ください。
それにしてもCOVID-19のパンデミック以来,長期間に渡る様々なリアルな活動が制限され、更に稀に見る酷暑の中で著者も原稿作成の気力を何となく削がれて第四回講座開講がこれほど遅れてしまったことを心苦しく感じています。講座に目を通してくださる技術者の皆様もそれこそ ”Health Care”-firstでお過ごしください。

第3章:ヘルスケア・システム構築のための基本技術 - ワイヤレス技術篇 III -

前回まではIEEE 802.15.6 BAN MACにおける競合アクセス(contention access)と非競合アクセス(contention-free access)の基本的なチャネル・アクセス手順について学んできました。競合アクセスでは(データの重要度に依存する)優先権の設定パラメータやチャネルアクセス後のデータのやり取りの基本を学びました。一方,非競合アクセスでも従来から用いられているSlotted ALOHAのような送信タイミングに制限の大きくなるチャネルアクセス方式に存在した欠点を改善できるようAC(Access Categoly)などの通報内容による チャネル割り当ての機会に“優先度” を設ける仕組みが設けられました。これはデータ伝送手順の改善技術の進展をIEEE 802.1Dを簡略化した優先度の導入で達成したもので,BAN応用では要となるアクセス制御です。これらのデータ伝送手順の基本技術は「自動再送要求(Automatic Repeat Request)」です。第3回講座ではデータ伝送における効率化の要となるARQについて講座を開設しようと思います。

第2章:ヘルスケア・システム構築のための基本技術 - ワイヤレス技術篇 II -

第二回目の講座内容を進めるに当たって気が付きました。CSMA/CAのようなランダムアクセスについて知識の少ない方や殆ど無い方もいるだろう,と。特にこれまで実装実績が殆どなかったPCF/contention free access については情報が限られているのではないでしょうか。そこで,今回は,CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance:搬送波検知衝突回避アクセス方式)とContention Free Accessを基本としたPCF(Point Coordination Function:集中制御)の基本手順の仕組みを解説をしようと思います。

第1章:ヘルスケア・システム構築のための基本技術:- ワイヤレス技術篇 -

NPO Wireless Brain Network(WBN)では設立趣旨に沿った多様な技術支援を実施していますが、ヘルスケアを中心とした情報システムの構築支援もその守備範囲となっています。ヘルスケアのための情報通信システムを援用した提案についてはこれまで内外を問わず多くの試みが報告されています。1990年代より医療・健康情報を情報通信技術を用いて診療に役立てようと云う動きがありましたが、ディジタル通信関連技術、特にワイヤレス・セキュリティ技術の不安よりなかなか広がりませんでした。2000年代に入りこれら技術の画期的進展により遠隔医療のようなシステムもサービスされ始めています。一方、今後リアルタイム・ヘルスケアの重要性はますます増すことは確実でしょう。本講座の第1章ではヘルスケア関連を目的として標準化されたワイヤレス技術について解説する予定です